ランチェスター戦略とボトルネック戦略

ランチェスター戦略

ランチェスター戦略を勧める理由は、開業医の現実に良くマッチしているからです。
ランチェスター戦略の基本は、①強者の戦略 ②弱者の戦略 の二つで構成されます。

  1. 強者の戦略は、物量と規模に優れる米軍を考えてください。
  2. 弱者の戦略は、ゲリラ線です。

強者と弱者を分ける基準は、市場における占有率です。
私達はほぼ全員が弱者に相当しますが、強者の戦略を知ることも重要です。なぜなら、それが「やってはいけないこと」だからです。戦略とは、「何をしないかが重要」を忘れないでください。

ランチェスター戦略では、戦略力と戦術力の最適比率を2:1と定めています。戦略が、「やり方」の2倍大切だということです。

ランチェスター戦略で重要なポイントは、3つです。

  1. No.1主義
  2. 足下の敵攻撃主義
  3. 一点集中主義

1. No.1主義

No.1主義とは、一位になることではありません。「圧倒的な1位」になることです。
圧倒的な1位とは、2位以下に3倍以上の差をつけて勝つことです。
1位になりやすい順番も大切です。①地域 ②患者層 ③医療サービス の順です。
鎌倉市大船でまず1位となり、次に高齢者で1位となり、次に心療内科で1位になる、という順番です。

2. 足下の敵攻撃主義

これを競争目標と攻撃目標の分離といい、とても重要です。「勝ち易きに勝つ」という孫子の戦略とも一致します。弱者が強者を倒すときは、弱者が強者に対して正面勝負をかけてはいけません。

まずは、強者に対しては軸をずらします。たとえば、大船地区における精神科のNo1は、Hクリニックです。このHクリニックに精神科領域で正面勝負はかけません。「差別化戦略」といって、敵と違うことをするのです。こちらは「心療内科」に勝負のフィールドをずらしました。軸をずらしてニッチな領域で闘います。心療内科は私のホーム領域だからです。

そして勝負をかけるのは、自分より弱い存在に対してです。弱い存在に対しては、「ミート戦略」といって相手の戦術に合わせるのです。そうすると実力で勝るこちらが勝ちます。

3. 一点集中主義

弱者が戦略敵であるとは、一点集中であると肝に銘じてください。
一点集中とは、他を思い切って捨てることです。自分の強みと興味にあわせて、差別化を行った上で、その1ポイントで必ず勝つのです。圧倒的な1位を目指してください。

1位をとる順番は、① どこ(地域) ② だれ(患者) ③ なに(領域)の順です。

ちなみに集中する上で、一番重要な資源は、時間です。成果は時間の二乗に比例するからです。
「他人の倍働く」とは、2倍の労働時間を言うのではなく、√2 倍の労働時間をいいます。
本当に2倍働いたら、4倍の成果に相当します。

ランチェスター戦略のまとめ

1. まず差別化を行うこと。差別化については次項を参照
2. 次に一点集中を行う。①どこで ②だれに ③何を の順に
3. 集中したポイントに全力を投じ、2位を3倍以上引き離す圧倒的1位を獲る

次は、ボトルネック戦略について説明します。

ボトルネック戦略とは

クリニックは、一人の患者様が一本のラインを流れてゆきます。入り口から入ってきて、受付を行い、診察室に入って、会計をして、出て行く。複数の人が、一人の患者様に様々に関わるので、ボトルネック戦略(制約理論:TOC)が良く適用できます。

ボトルネック戦略の基本は、「一本のラインの成果を出す速度は、律速段階に依存する」という原理です。一番遅いところのすぐ手前に、滞りが生じます。この状態で、ボトルネックの上流や下流の人が幾ら
頑張っても、全体の生産性は改善するどころか、悪化します。
従って、ボトルネックに対応する戦略とは、

1. ボトルネックを発見する
2. ボトルネックの生産性を最大にする工夫をする
3. ボトルネック以外のセクションの生産性を制限する
4. ボトルネックを解消させる
5. 1に戻る

このサイクルを回し続けることです。