5. Role Integrity Process の解説

Role (Responsibility)

戦略は目的(Why)に従い、目標は戦略に従います。
戦術は目標に従い、役割と責任は戦術に従います。
これが上流から下流への流れです。したがってDesignはRoleより重要です。
強みで振る
目標がSMARTに決まれば、役割の割り振り方は見えてくるはず。
実際にどのように役割を振れば良いのでしょうか?
そのために用いる軸が二つあります。それが
軸I 強み
軸II スタイル
です。
強みを知るにはマーカス・バッキンガムのストレングス・ファインダーを勧めます。1600円でスタッフの強みを5つ拾いだせ、その強みを生かす状況とはどのようなものか?を知ることができます。
5%にWHYを当てる
例えばあなたが院長として機能するとき、80%は『医師である』という役割です。医師であれば、あなたでなくても良い。そして15%はあなたの専門性に相当します。呼吸器が専門なら、呼吸器科医ならあなたの代役ができます。しかし5%だけ、どうしても『あなたでなくてはならない』という部分が残ります。これが5%の法則です。
では院長として、あなたでなくてはならない、という5%はどこにあるのでしょう?これは結局グランド・デザインにさかのぼります。あなたの情熱はどこにあるのか?あなたの強みはどこにあるのか?あなたは何故それをしたいのか?あなたは誰を支えたいのか?あなたはどうなりたいのか?それが5%の部分に相当します。つまり役割分担において『個人の強みをチームに導入する』極意とは
5%にWHYを当てる
です。すなわちメンバー個人の『自分にしかできない強み』『情熱のありか』『誰を支えたいのか?』といった5%の部分がチームのWhyと一致したとき、そのメンバーは最も輝くことができます。このような役割分担が実行できるためには、
- チームのWhyを明確にしておく
- メンバー個人の5%をリーダーが把握する
- メンバー個人の5%とチームのWhyの一致を見つける会話をする
といった手順が必要です。メンバー個人の5%を把握することは、かなり時間を要する作業ですが、この3つはリーダーシップの本質とも関わる重要な部分です。時間とエネルギーの投じどころだと思います。
達成君と貢献君
ゴールを共有して進むチーム内に様々な役割があります。全員がフォワードでは、良いチームではありません。各メンバーのスタイルの違いを理解することはチームビルドの極意です。行動特性として下記の二つを意識してください。
達成君:達成を通じて貢献する。任務にこだわり結果を追求する
貢献君:貢献を通じて達成する。人間関係を重視し仲間を支える
あるメンバーが達成君なのか、それとも貢献君なのかは、その人固有固定の特性ではありません。ある状況ではバリバリの達成君である人が、違うチームや状況においては貢献君として機能するかもしれません。
ポイントは、達成君と貢献君が、感性がすれ違うことです。
達成君からみた貢献君
『いいから成果だせよ!気持ちだとかメンドクサイこと言わずに、結果だそうぜ結果を!』
貢献君がみた達成君
『そんな数字のことばかり言って。ほら見てみなさいよ、皆の顔が暗くなってるじゃない!これじゃあやっても楽しくないし、皆が喜ばなくては意味がないのよ。』
これがスタイルの違いです。どちらかが正しい訳ではなくスタイルの違いであり、どちらも大切です。達成君を支え、チーム内において触媒のような働きをする貢献君の存在意義も不可欠です。
二つのスタイルが上手く組み合わさるために
今この状況において誰が達成君として機能し、誰が貢献君なのか、を認識することはチームビルドの極意の一つです。では認識した上で、どのようにすればその二つのスタイルが相補的・相乗的に機能するのでしょうか?
それにはそれぞれのスタイルが下記を実行することです。
達成君の課題
・ 自分の達成はチームメンバーの貢献の結果であることを忘れない
・ 貢献君に対して感謝と承認を行う。『ありがとう!君のおかげです。』と本気で言う
・ 自分の弱みを開示し、弱みに対する援助を積極的に受け容れる
・ 成果のためにメンバーが必要であると知り、メンバーを深く知るための会話を惜しまない
・ チームの雰囲気やメンバーが何を感じているかに積極的に関心を持つ
貢献君の課題
・ 達成君の弱みを自分の強みでもって陰徳で支える
・ 達成君に対してリスペクトを表現する。『凄いですね。あなただから出来る』
・ 自分の価値を自分でしっかり認める。自己卑下禁止。誇りと自尊心を保つ。
・ チームの目標をいつも意識する。数字から目を逸らさない。
・ 達成君と対等に会話する
達成君だけのチームは弱く、貢献君だけのチームも弱い。二つのスタイルが相支え合うとき、圧倒的な成果が生まれます。役割と責任は、奥が深い世界です。
Integrity
Integrityは欧米のリーダーシップ論や組織論で必ずでてくる言葉です。
しかしながら日本語には相当する訳がありません。
なるべくニュアンスを表すように訳せば、『言行一致をともなう誠実さ』が最も近いでしょう。チームビルドにおけるIntegrityと、そのパワーについて説明します。
Integrityって何?
自らの言葉を尊ぶことです。判り易くいえば、やるといったことをやる、ということ。思っていることと、言っていることが一致し、言っていることとやっていることが一致していること。正しいことを思っているかどうかではありません。誰が見ているかに関係なく、思いと言葉と行動が一貫して一致していることです。
いかなる思想も、いかなる想いも、いかなる戦略も、Integrityなしでは全てが無に帰します。Integrityこそが抽象の思考世界と具象の現実世界を結ぶ鍵です。
Integrityと自分
Integrityを追求するとは、自分と向き合うことです。Integrityがまず問うてくることは、あなたの真正性(authenticity)です。あなたがYesというとき、それは本当にあなたにとってYesでしょうか?あなたがNoというとき、それは本当にNoですか?あなたは喜ぶべきときに喜び、怒るべきときに怒り、泣くべきときに泣けますか?Integrityを追うとは、間違いをしない人になるという意味ではなく、聖人君子になるという意味でもありません。自分に対して真っすぐに深く向き合う。さまざまな抑圧から解放された、本当の自分を感じながらそれに沿って行動していますか?ということです。これはものすごく深い課題であり、実はスピリチュアルな課題でもあります。
Integrityと人間関係
人生は人間関係です。そして人間関係の基本は信頼です。信頼の根源はIntegrityに行き着きます。自分と深く向き合い、そして他人と深く向き合う。
Integrityを高めてゆくとは、そういうことです。本当に良い人間関係をもつとは、あなたがIntegrityを保つことに等しいのです。自分と良い関係をもち、他人と良い関係をもつこと以上に価値のあることをあなたは知っていますか?
Integrityの真の価値
Integrityを保つとき、人間関係は素晴らしく深まってゆきます。それは人生の本当の果実です。社会的な成功だけでなく、人間的にも成功することの極意はここにあると私は考えています。いずれ現世から消えるはかない命。何のために生まれて、何のために死んでゆくのか。本当の関係性の中に生きるためではないのか。それはすなわちIntegrityの追求。霊的探求の道といっても良いでしょう。
あなたが、Integrityを保ってゆくと、そこにはもう一つ素晴らしい報酬があります。Integrityを保つと、あなたの言葉にパワーが宿るようになります。
そんなあなたにとって、世界とは『私の言葉は、実現する。』という世界になります。次に問題になるのは『さぁ何を言おうか・・・』
です。真っ白なキャンバスにあなたが、言葉で可能性を描く。
そしてその言葉は、実現する。なぜなら、あなたがIntegrityを保つから。
なんという自由、なんという素晴らしいパワー、何という希望でしょう。
あなたが自由と希望とパワーを手にするための魔法がIntegrityです。
Integrityの保ち方
ではどのようにすれば、Integrityを保てるのでしょうか?キーワードは下記と考えています。
- 感じることを大切にする
- 言葉を尊ぶ
- 陰陽を統合する
感じることを大切にする
まずは自分の感情を素直に感じて、認めて、受け容れることです。
プラスの感情だけでなく、マイナスの感情も重要です。
怒り、いらだち、怖れ、悲しみ。自分は何に対して、何を感じているのか?
どうしてそう感じているのか?それを深く掘り下げてゆく。
自分が喜ぶことにブレーキをかけない、楽しむことを否定しない。
なぜ自分は苛立っているのだろう?なぜ自分を怒るのだろう?なぜ自分は怒れないのだろう?自分の心の動きを深く見つめてゆく。何に影響を受けているのか、何を投影しているのか?徹底的に探ると、自分のルーツが見えてきます。
ほとんどの場合、原体験は親との物語と関わっています。
自分と深く向き合ったら、今度は他の人を感じましょう。
他の人が発している『人間性オーラ』をそのまま感じた状態でいられる在り方。
なんのフリもせず、策を弄することもなく、真っすぐに目標にロックオンし、自分に対して素直に、他人に対して深い共感性と親密さをもって、関係性の中にいる自分を静かにみている在り方。他の人をモノのように感じるのではなく、人として感じている在り方。
他の人から放射される人間性を感じる訓練として一番優れているワークが『箱セミナー』です。この感覚は言語化困難であり、セミナーにおける体験をもって伝えるしかありません。開業応援塾のMLにも参加している西田氏がファシリテートする箱セミナーを皆様に強くお勧めします!
言葉を尊ぶ
やるといったことを、やる。何か苦しさを伴いますが、Integrityを保つためには、必ずしも『やり抜く』必要はありません。
例えば、来週の月曜日までに原稿を仕上げるといったとしましょう。金曜日の段階で『あぁこれはもう月曜日までには間に合いそうにないな!』と悟った。ここでIntegrityを保つためには、下記を実行すれば良いのです。
・ まず自分で『期限を月曜日から水曜日に変更する』と宣言する
・ その宣言が影響する全ての人に、お詫びと伝達を行う
・ 『水曜日まで』の新たな宣言を守る
これが言葉を尊ぶということです。面倒ですが、不可能ではないですよね。
現実がコミットメントについてこないときは、コミットメントを変更してしまう訳ですね。ただし、私達が関係性の中にいる以上、コミットメントの変更は関係性の範囲内全てに実行する必要があります。
陰陽を統合する
闇があるから光がある。過去があるから未来がある。陰を認め、陰を受容して、陰と陽に同じく足を置いて立つ。Integrityを保つとは、陽だけのフリをしては成り立ちません。陰とどのように向き合うのか。陰と陽が時を通じて織りなす模様全体を捉えて統合してゆく。
詳しくは『ネガティブを愛する生き方』伊藤美海、『The Meta Secret 』Dr.Mell Gillをご覧ください。
以上がIntegrityへの取り組み方です。そう、とてもとても大変なことなのですが、とてもハートフルで、とても生き生きとした世界でもあります。
井出ワールドが濃くなったため、わかりにくくなったかもしれません。
スピードの早い現場で、自分をみつめる時間など無いのが普通でしょう。
現場でW-DRIPを使うときのIntegrityを一言で言うなら
箱から出て会話しよう
に尽きるでしょう。
意味不明の方は是非是非、箱セミナーを一度御体験ください。とにかく良い人間関係を維持するために、自分を開くということです。
Process

成長に向けて改善を続ける
Whyで始め、Designし、Roleを振って、Integrityを保ちながら、成長と改善に取り組み続けます。それがProcessです。具体的には下記を実行すること。
結果を測定して、フィードバックをかけること
スコアの無い試合はつまらない。きちんと測定するからこそ、現状がわかり、理想とのギャップが課題として見えるのです。フィードバックをする仕組みを創るだけでも仕事のクオリティが上がるものです。
ボトルネックを同定して対応すること
一本のラインに乗るプロセスには必ずボトルネックがあります。ボトルネックが発生したときは、まずボトルネックを同定し、他の作業を減速・停止してボトルネックのヘルプに注力しましょう。
究極は『フロー状態』を達成すること
メンバー全員が、ひとつの目標に完全に集中し、『氣』を合わせたとき、そこに『フロー状態』が発生します。美しい、調和した、集中した、純粋なパワー。時間の感覚を忘れるような、怖れもこだわりもない世界。そんな状態で仕事ができたら、圧倒的な成果に恵まれることでしょう。