採用の極意
IV. 良い採用の極意
採用の極意とは、
- ほとんどの人を徹底的に落とすこと
- 自分や家族が応募したくなる職場にすること
- 時間とお金と気力を投じて耐え抜くこと
1. 採用の目的
採用の目的は、グランド・デザイン実現のためのエネルギーと成果を得るためです。
エネルギーとは、想いであり意欲であり能力であり時間です。
成果とは、グランド・デザイン実現のために達成すべき目標を達成することをいいます。
黒字社員を採用して、赤字社員を採らないこと。これが大事です。
採用の目的に合致しない人は、「いい人」であったとしても船に乗せてはなりません。
採用の目的は、抽象的ですが、採用に関する行動の全てを支配しており、大切です。
開業応援塾に通底する思想である「抽象度の高い上流からデザインする」ことを忘れなく
2. いつ、何人採用するか
「なんか忙しいので、もっと人を採用しよう」と考えてはなりません。それは経営者の考え方ではありません。まずグランド・デザインをしっかり見つめながら、どれくらいの規模にするのか?を経営者として考えてください。「いつのまにかこうなった」ではなく、今何もない時点から未来をデザインするのです。そしてそのデザインを達成するために必要な人員を考えてください。
例えば、看護師は本当に必要ですか?看護師でないとできない業務って何でしょう?
臨床検査技師にも、①採血 ②各種生理検査 ③点滴の準備 ④内視鏡検査介助 ⑤診療補助
ができます。エコー検査を実施すれば、生産性ももてる。とても頭が良い人も少なくありません。しかも雑多な業務を嫌な顔をせずやってくれます。それでいて給与相場はナースよりも明らかに安いのです。資格としてナースにしかできない業務としては、点滴の刺入作業くらいです。あなたのクリニックで点滴は一日何人しますか?全てを準備しておいてもらえたら、あとは針を刺すだけなら2分あれば十分です。仮に1日3人点滴をするとしても、院長が6分時間を使うだけです。
もちろんナースにしかできない仕事は、たくさんあります。医療の中でナースが果たせる役割は、一般に考えられているよりもずっとずっと大きいです。そういった役割を果たしてもらうための採用なら良いですが、ただ漠然と点滴とかしてもらうため、と考えているのであれば、院長が点滴をすればよく、ナースは不要です。
3. 人件費は給与と同額ではない
現実には
人件費= (給与月額+年間賞与額) ×1.3
が直接必要となる人件費です。
しかし実際にはもっとかかります。それは採用費用と教育費用、それから不測事態対応費用です。採用費用は募集広告費用だけではありません。面接や募集に関わる人件費も実はコストとして大きい。計算すると驚くほどの金額になります。教育費用はかければかけただけ、天井知らずに上昇します。ただし、会計上は教育費は人件費にいれずに、研究開発費とするのが良いです。
不測事態対応費用とは、スタッフの病気・事故・妊娠出産などへの対応費用です。
Ⅴ. 採用の構造
採用の構造を決めるにあたっては
採用準備⇒選考⇒募集
という段階を経てください。
採用準備とは以下のことをしっかりと定めることをいいます。
- 理念・ビジョン・クレドの確立
- 良い職場づくり
- 採用基準の確立
グランド・デザインについてはこれまでも多く扱ってきましたので、ここでは触れません。
ではまず良い職場つくりについてみてみましょう。
Ⅵ. 良い採用は良い職場づくりから
従業員満足の高い職場にしないと、良い人は来ません。考えてみると、当たり前ですよね。
応募者も必死に選んでいます。誰だって、ブラック企業(労働条件の劣悪な組織)に就職したくはないです。良い職場とは?ここも陰と陽の二要素で成り立っています。
陽 満足向上 理念と想い 自己重要感 納得感 成長実感
陰 不満解消 労働条件 給与・休暇・労働環境・福利厚生
どちらもしっかりと創っていってこそ、良い職場になってゆきます。
採用の一番重要なポイントは、ここにあると思います。良い職場には、良い人が集まる。
良い想いをもった人達が選ぶ人は、やはり良い想いをもった人です。
まず法律違反はやめましょう!
社会保険とか、厚生年金とかはきちんと規定通り!
そして皆さん、決してサービス残業などさせてはいけません。ではどうすればよいのか?
それはセミナー中に策を提示します。
これまでの医療の常識を、そのままひきづっていると大変なことになります。
ではスタッフの満足度を向上するにはどうすればよいのでしょうか?
それは下記を高めてあげることです。
- スタッフの自己重要感を高める
- スタッフの納得感を高める
- スタッフに成長を実感させる
- スタッフの自己重要感を高める
自己重要感とは、自分がここにいていいんだ、必要とされているんだ、こんな自分がOKとされているんだ、と感じてもらうことです。
スタッフのことを良く知ってください。どこに、誰と住んでいて、何を大切にして、何を楽しんでいるのか。今どんなことに困っているのか。
名前を呼んで、笑顔で心から「ありがとう」を伝えましょう。プライベートなことにも少し触れることは大切です。たとえば「お母様のお具合はもうよくなりましたか?」など。
スタッフの取り組みを認めてあげることも重要です。結果がでる前の段階の取り組み自体を、「一生懸命取り組んでくれてありがとう」「真剣にやっていますね、嬉しいです。」「ベストを尽くしてくれればよいのですよ、そんな感じで」と。
結果がでたときは、しっかりと認めてあげましょう。
「あなたのおかげで、このマニュアルができて、医療の質がぐっと上がりました、ありがとう」など。
□ スタッフの納得感を高める
依頼した仕事は何の役にたつのか、どのように患者さんや、仲間に貢献するのかを説明しましょう。そして、スタッフ個人に対しても、成長の機会であること、挑戦の機会であることを説明しましょう。
そのスタッフが目指している将来像は何でしょうか?依頼した仕事に取り組むことで、彼または彼女が目指している将来像に、どのように近づいてゆくのでしょうか。
□ スタッフに成長を実感させる
「以前のあなたは●●だったけど、今は□□できるようになったね!素晴らしい」 などと、成長を実感させてあげましょう。スタッフ本人に、以前の姿を思い出させてあげるのも良いです。
今後さらに成長できますよ、と希望を与えましょう。
Ⅶ.給与はいくらにすればよいのか?
基本的な考え方は
・ 同じ職種の相場を確かめること
・ 最低でも相場にすること
・ できれば相場より少しよくすること
・ 最大でも相場より20%高以上は上げないこと
・ 賞与は原則なしがお勧め
・ 退職金も原則なしがお勧め
給与は数字です。数字は比較の対象になります。相場よりも低い給与で良い人をとろうとするのは考え方が間違っています。でもあまり高くしてしまうと、経営は成立しないし、お金につられるタイプの人が集まりますし、逆にお金にスポイルされてしまいます。
賞与は、だしましょう。でも原則は、ナシにしておくのです。そうすることで、頑張った人には、しっかりとお金をだす仕組みができます。
退職金も、準備しましょう。でも規定には信愛クリニックではのせていません。
Ⅷ. 休暇はどのように?
規定どおり実行することが大切です。信愛クリニックではホリデーナインという制度をつくって運用しています。これは有給休暇を年に1回、9日連続で取得しなくてはならないというルールです。
この休暇の良いところは、この休暇を実践するために業務の見える化が進み、属人性が改善することです。
Ⅸ. 環境整備
スタッフのためのスペースや、ロッカーなどの環境、そもそも綺麗な医院であること、などは意外と重要な要素です。
Ⅹ. 採用基準
採用基準をもつことは本当に重要です。
それがないと、「いい人」を採ってしまう。でも「いい人」って何ですか?人当りの良い人?
実は全く曖昧であり、かつ経験的にいってそれでは上手くいかないのです。
まず最初に、原則を伝えます
・ 医療機関からの中途採用は 即戦力を求めない
・ 異業種からの中途採用は、良い
・ 新卒にはメリット・デメリットあり
採用基準も陰陽の法則です。下記をしっかり「書き出す」ことが重要です。
陽 どんな人を採用したいですか?はっきりと明記してください
陰 どんな人を採用したくないですか?はっきりと明記してください
ズバリ、言います。基本は、人柄です。ヒューマンスキル、あるいは、人間力です。
自分で自分をどうみているか、何によって動機づけられているのか、他者とどのようなつながりをつくってきたのか。技術や、知識は、人間力があれば教えれば身に付きます。
基準を列挙することはとても重要です。しかし現実にもっと重要なことがあります。
それは、採用に適した採用担当者が面接をすることです。
院長が最高責任者であることは、間違いありません。採用の結果に対する全責任を院長がとってください!しかし院長が採用眼において最も優れているかどうかは、わかりません。
おそらく最も優れては、いないと思います(笑)。
私の経験で、鑑定担当として優れている人とは下記のような人です。
・ あなたのクリニックの理念・文化・スタイルを理解していて、それを好きな人
・ 色々な意味で「カンが良い」ひと
・ 女性
・ 面接で、きちんと突っ込める人
・ なぜ採用なのか、なぜ不採用なのか、言語化して説明できる人
一方で、採用担当者【面接官】として不適切な人とは
・ どんな人も「いい人ですね」といってしまう人
・ 感情の起伏が安定していない人
・ 好き嫌いで行動が左右されやすい人
・ クリニックの文化風習に馴染んでいない人
・ 院長のことを好きではない人
そのような担当者がいない場合は、院長が自ら面接をするしかありません
開業当初に設定していた基準は、その後変遷してゆくでしょう。
失敗は必ず経験するはずです。とりえあずは今現在の状態で、採りたい人と、採りたくない人を
しっかりと定めてください。