ザクザク患者様を集める外来術

I. 『患者ザクザク』を起業家の視点で考える

起業家の視点とは、『開業医というビジネス』をデザインするということです。
今回の『患者様ザクザク』に直接関連する項目だけでも、下記について徹底的に考えて、勉強し、調査し、新しい何かを創造し、そして実行してゆかねばなりません。

  1. どのような医療を提供しますか
  2. どの地域・場所で開業しますか?
  3. 対象となる患者層はどんな人ですか?
  4. 患者層のどんなニーズに応えますか?
  5. あなたのクリニックの売りを一言でいうと?
  6. 新規患者を増やすための戦略は?
  7. 既存患者の維持率を高めるための戦略は?

起業家にとって下記も間接的には『患者様ザクザク』に関わる重要項目です。

  • どのようにしたらリーダーシップが得られるのか(人はどうしたらついてくるのか?)
  • どのようにしたら組織がうまくいくのか?
  • 会計・経理・財務はどのようにしたら良いのか?
  • どのように資金調達をするのか?
  • どのように計画をたてるのか?
  • どうやって自分の時間を配分するのか?

これら全てが総合的に機能したときに、『患者様ザクザク』は生じます。
そして今回は『既存患者様の維持率を高める』ことに関して、さらにその戦術面の一つである『医師として患者様の心を捉える外来術』について扱います。

これはサッカーでいえば、『ゴールエリア内におけるフォワードのシュート技術』に相当します。
実際の試合で点を入れて勝つためには、チームの構成、練習環境の整備、チーム戦略、他のポジション選手の技量、チーム内の連携、相手チームの情報と対策、などが総合的に機能したときに初めて勝利がもたらされるように、実際の開業医もフォワードだけでは勝てません。

『戦術の誤りは戦略でカバーできるが、戦略の誤りを戦術でカバーはできない』

を忘れないでください。

II. 『患者ザクザク』を社長の視点で考える

サッカーでいえば、フォワード選手の視点ではなく、監督の視点です。チーム全体を見渡し、結果を出すために何が必要なのかを判断するのが監督の役割です。監督が、フォワードのシュート技術のことだけを考えていたら、チームは敗北します。
あなたが社長(監督)として成果をだすために、まず必要な意識とは

開業医はサービス業であるという事実を受け容れる

ことが第一歩です。これに同意できない人は、開業は向いていません。
自分が提供できる技術をひたすら患者に提供しようとする、これは職人の発想です。

患者様が求めることを提供するには自分はどう変われば良いのか?

この考え方がサービス業の基本です。
スターバックスはコーヒーを提供し、美容室はヘアデザインを提供するように、開業医は医療を提供するのです。
これから先、素晴らしいと思ったあらゆる業種業態のサービス業を私達の師としましょう。

コーヒーは旨いのに、店は不潔で店員は無愛想なコーヒーショップが隆盛するでしょうか?そう、サービス業として卓越するためには、チーム全体が美しく機能しなくてはなりません。

医療機関のサービス業としての意識は、他業種に比べると非常に低い。

大きな病院ならば、外来で2時間待ちなどとは普通のことであり、4時間以上も待ったという話もよく聞きます。
予約時間から4時間もずれるなんて他業種ではあり得ないことですね。

としたら、もしも『予約時間ピッタリ!』の外来診療が提供できたらどうでしょう?『当院はご予約のお時間を必ず守ります!』と言い切って、これが実践できたら、患者様にとって魅力だと思いませんか?

『そんなのムリに決まってる』と思ったあなたは正しい。
しかしだからこそ、そこに大きなチャンスがあるのです。『予約時間ピッタリ』を、本当に本気で職員全員が目指したとして、達成できない理由がありません。

仮にあなたの外来医としての魅力が凡庸なものであったとしても、『予約時間ピッタリ』を堅守するクリニックならば、それは非凡なクリニックになるのではないですか?あなたが患者としてクリニックを受診しようとしたときに、予約から2時間は待たされるかもしれないクリニックと、予約時間ピッタリで診てくれるクリニックと、どちらを選びますか?

これが職人から離れて、社長として考えるということです。
引き続き『患者ザクザク』になるためのポイントを社長の視点から考えてみましょう。

 

盛業の本質は『患者のハートを捉えるシステムと技術』

どんなに良い立地に開業し、どんなに高度なマーケティングを行っても、一度来院した患者が『もう二度ときたくない』と思ったなら、そのクリニックは存続できません。

悪評は一瞬で千里を走ります。開業医は地域に密着した営業形態であるため、狭い範囲の市場を確実に獲得できなくては、あっという間に競合に患者様を奪われ『カンコ!カンコ!』と鳥が鳴きます。今、目の前にいる患者様の心をしっかりとつかまえて、一人そしてまた一人と評判を積み重ねてゆくことが盛業への道です。

 

患者のハートを捉えるのは医師(院長)の『人柄』や『キャラ』であると考える院長が多く、システムとして患者のハートを捉える意識をもつクリニックは少ない。医療以外のサービス業は『顧客のハートを捉える技術とシステム』を徹底研究しています。私達にそれができない理由がありません。

患者様のハートの捉えることはシステムと技術の成果なのだと社長が認識すると

 

  • 患者のハートをチーム全体で捉えるという意識ができる
  • 技術として認識するが故に、それは共有でき、教育でき、訓練できる
  • あなた自身も含めて、他の医師もハート捉え技術を習得できる

 

1.患者のハートを掴むには、チームプレーが必須

どんなに優秀な人でも、一人でできることには限界があります。

『卓越した人に卓越したことをやってもらう』よりも『普通の人達が卓越したことを実行できる仕組み』を創るほうがずっと現実的です。ここで私が実際に経験した恐るべき真実をお伝えしたい。

 

普通の人が卓越したことを実行できる仕組みをつくると、普通の人が卓越した人に変わる

 

どうですか?『ちっとも良い人材が応募してこない』と嘆いているあなた。

問題は100%あなたにあったのです!

あなたのクリニックで患者の電話を受けたスタッフがとても温かく素晴らしい対応をしたら患者はどのように感じるでしょう?

来院時に受付スタッフが明るく優しく気が効いて対応したら?

ナースが適切に事前情報をあなたに伝え、あなたの診療内容を適切に補足してフォローし、栄養士が素晴らしい生活指導を行い、薬剤師が薬に対する理解と動機を高めてくれたらどうでしょう?

患者のハートをずっと掴みやすくなると思いませんか?

そうなるようにチームを創るのが社長の仕事です。

 

スターバックスコーヒーにいくと、店員がとても気持ちの良い応対をしてくれますね。あれはスターバックスが最初から爽やかな応対をする店員だけを採用しているのでしょうか?

違います。

スターバックスには、どのような接遇をすればお客が快適に感じるのか、やり方が定められており、教育・訓練の仕組みができており、現場でそれを管理する仕組みがあるのです。それがシステムです。

 

システムを創るのが社長の仕事です。もしもあなたのチームがスターバックスのように運営されていないとしたら、それは100%社長であるあなたの責任です。

 

2.技術は、伝達可能であり、学ぶことができる

 

技術は、教育し、訓練することができます。つまりあなたが今現在は患者の心をつかむことは苦手に感じていたとしても、技術を学ぶことにより患者の心を上手につかむことができるようになるのです。

私達はつい『できる人』が現れないかなーと期待します。

そんな人は現れません。

現れたとしても、その人が辞めてしまったら(そして辞めてしまうのです)、患者の心をつかむという機能は停止してしまうことになります。このような状態を『その機能は属人性が高い』といい、属人性が高い状態は組織として危険な状態です!

普通の人が、患者の心をつかむようにプレーするためにはどのような仕組みにすれば良いのでしょうか?これを考えて実行し、効果を判断しながら、改善を重ねてゆけば個人に依存するのではなく、システムに依存して成果が得られるようになります。

このように属人性リスクを回避し、システムを創り上げるのも社長の責任です。

 

3.他の医師にも技術の伝達が可能になる

あなたのクリニックが非常勤の医師を雇用したと考えてください。

 

圧倒的に素晴らしい医師がきてくれれば良いのですが、そんな医師は私達自身を筆頭に存在しません。もしくは存在したとしても来てはくれません。

そこで、私達のような普通の医師がどのようにしたら患者の心をつかむことができるようになるのか、この技術を明確にすれば、非常勤の先生にもそれを伝達することが可能になります。

 

ここはすごく重要なポイントです。それは皆様が開業したら、必ず複数診で営業して欲しいからです。これは応援塾の塾生の必須条件としたいくらい、重要なことです。

 

複数診が、ビジネスの利益率を高め組織を強化するからだけではありません。あなたの時間とエネルギーを護り、あなた自身が消耗し疲弊しないために複数診の導入が必要なのです。

単に規模の拡大を主張しているのではありません。ここに根本的な発想の転換があり、規模を追求するのではなく質の成長を追求する姿勢があります。

これは職人の発想ではなく社長の発想です。

 

患者様のハートを捉える技術をあなたがマスターしたとき、あなたはそれを他の医師に伝えることができるようになり、クリニックの『診療レベル』を保つことができるようになって、あなたの『代役』が生まれます。様々な困難を乗り越えて、これを達成することが社長としての仕事です。